本を開く一文を自分で打ってみよう。どこで息を継ぎ、どの言葉を先に置くかが手に残る。
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
· 夏目漱石 「吾輩は猫である」 1905
親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。
· 夏目漱石 「坊っちゃん」 1906
山路を登りながら、こう考えた。
· 夏目漱石 「草枕」 1906
ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。
· 芥川龍之介 「羅生門」 1915
ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。
· 芥川龍之介 「蜘蛛の糸」 1918
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
· 太宰治 「走れメロス」 1940
私は、その男の写真を三葉、見たことがある。
· 太宰治 「人間失格」 1948
あさ、眼をさますときの気持は、面白い。
· 太宰治 「女生徒」 1939
よだかは、実にみにくい鳥です。
· 宮沢賢治 「よだかの星」 1934
ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。
· 宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」 1934
高瀬舟は京都の高瀬川を上下する小舟である。
· 森鴎外 「高瀬舟」 1916
えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。
· 梶井基次郎 「檸檬」 1925
これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。
· 新美南吉 「ごん狐」 1932
「武蔵野の俤は今わずかに入間郡に残れり」と自分は文政年間にできた地図で見たことがある。
· 国木田独歩 「武蔵野」 1898
市九郎は、主人の切り込んで来る太刀を受け損じて、左の頬から顎へかけて、微傷ではあるが、一太刀受けた。
· 菊池寛 「恩讐の彼方に」 1919